ソーシャルリスニングのROI(Return On Investment:費用対効果)を測定することは、ブランドやエージェンシーにとって一般的に難しいことです。
目標達成に向けて順調に進んでいるのか、それとも軌道修正が必要なのか、それらをどうやって知ることができるでしょうか?ROIの測定にはベンチマークが欠かせません。
必要なソーシャルリスニングツールに投資する価値があるという証拠がなければ、ステークホルダーはどう感じるでしょうか?
ここではソーシャルリスニングのROIの期待値を検討する際に、念頭に置くべきステップを紹介します。
・ビジネスゴールの定義
・ベースラインの監査
・すべての背景にある理由を理解する
・自動化されたテーマの発見をROIの取り組みに役立てる
・監査結果を再確認する
・広義のROIを考える
目次
ビジネスゴールの定義
ROIは、すべてのブランドが同じように測定できる単一のものではありません。 非常に主観的であり、達成したいことに依存しています。つまり測定を始める前に何を測定したいのか、そしてその理由を決定しなければなりません。
以下のような質問をしてみましょう。
・販売促進のためにソーシャルエンゲージメントを高めようとしているのでしょうか?
・ソーシャルエンゲージメントを高めて売上につなげたいのでしょうか?
・オンラインやオフラインでのカスタマーエクスペリエンスを向上させたいのでしょうか?
・1つのキャンペーンの結果を測定したいのでしょうか?
・カスタマーサービスを再構築することで、ブランドの健全性を向上させたいとお考えですか?あるいは、新製品のアイデアが必要でしょうか?
・ブランドの認知度を高めるためにインフルエンサーを増やしたいのでしょうか?
・ブランドの認知度が実際にどこから来ているのかを把握したいのでしょうか?
例えば、グッチは「ソーシャルメディア業界レポート2019」のブランド情熱度で多くの愛を獲得しています。
これは、その独占性と信頼性によるものですが、特に影響力のあるミュージシャンのおかげで、その名前が高級品の代名詞となったことも理由の一つとなっています。
「That’s Gucci.」
また、韓国のポップバンド(K-POP)であるWe are One EXOのカイ・キムを#Guccicruiseのファッションショーにモデルとして起用したことで、EXOのファンから多くのエンゲージメントを得ることができました。
その結果、ハッシュタグ「#gucci_kai」がトレンドになるなど、潜在的なインプレッション(自分たちのコンテンツに目を向けること)が急増しました。
肝心なことは 、どのような目標であってもそれを具体的に示し、あなたにとっての成功とは何かを決めることです。
そして、大きな変動があった場合には、その原因を究明する準備をしてください。
もちろん、進捗を確認する最善の方法は、自分がどこから始めたかを知ることです。そこで「ベースラインの監査」を「やらなければならないこと」のリストに追加しましょう。
ベースラインの監査
測定基準のベースラインを確立しなければ、改善や失敗を知ることはできません。
目標を念頭に置いて、現在の状況を記録しましょう。記録は整理ツールを使ったり、シンプルなエクセルのスプレッドシートにまとめてもいいでしょう。
例えば、フォロワー数やメンション数を増やすことが目標なら、現在のフォロワー数を記録し、さらに過去1週間、1ヶ月などで増えたフォロワー数も記録します。
年末年始の売上を増やしたいのであれば、昨年の第4四半期を振り返ってその数字を確認する必要があります。
何をするにしても、この重要なステップをスキップしないでください。
ソーシャルアナリティクスが初めての方は、上記のように簡単に始めることができます。
しばらくソーシャルリスニングツールを使用している場合は、収集したより複雑なメトリクスのベースラインを再調整するために、ソーシャルメディアオーディットを行うのが賢明でしょう。
これらの指標には、ソーシャルセンチメントやブランドへの情熱度、インフルエンサー、エンゲージメント、コンテンツ、チャネル、オーディエンス、競合他社などが含まれます。
これらの分野での成長はそれ自体が目標となりますが、より大きなビジネス目標にも影響を与えるため、その影響も測定する必要があります。
理由を理解する
ソーシャルアナリティクスはソーシャルプロファイルだけでなく、ビジネス全体を促進するためのものです。
そのため「なぜ?」という質問は、ROIを評価する際に測定するものの主要な部分を占めています。
例えば、より多くのインフルエンサーを獲得することが目標であれば、その指標は単純な数字のゲームです。
しかし、それらのインフルエンサーがどのように、そして、なぜあなたのビジネスに影響を与えたのか?という理由が本当に知りたいことでしょう。指標が増減した理由を知ることで、効果を維持したり、改善することができます。
これは短期的にも長期的にも起こりうることです。
短期的には進行中のキャンペーンなどを評価するためには、リアルタイムのデータを利用します。UMG Nashvilleのようなブランドは、リアルタイム分析を利用してキャンペーンの途中で戦術を変更し、結果を成功に導きました。
キャンペーン終了後に振り返って「もっとこうすればよかった」と考えるのと、その場で競合他社が何をしているかを瞬時に把握し、戦略を変更して目標を達成するのと、どちらがいいでしょうか?
ホットワイヤ・グローバルではリアルタイムのインサイトを用いて、今起きているトレンドや未来へのヒントを掴み、クライアントの計画に役立てています。
また、ソーシャルモニタリングは状況の正確な把握が必要なハイリスクなイベントを監視する際に特に役立ちます。
リスクが発生した場合、ブランドが適切に対応するチャンスは通常1回しかありません。その対応を誤った場合の影響は、さまざまな意味で高くつきます。
また、将来のトレンドを示す「ヒント」も重要です。
もちろん、ブランドが課題を回避するためにも重要ですが、それだけではありません。ブランドは、予測能力がこれまで以上に強化されていることに気づくでしょう。
自動化されたテーマの発見を利用してROIの向上を図る
ソーシャルリスニングツールQuid Monitor(旧NetBase)の最新の機能は強力な次世代の人工知能を備えており、意味的に関連するブランドのテーマを自動的に特定できます。
これによりユーザーの偏見を排除し、既知および未知の様々な可能性を発見できます。
例えば、ベンダーの認知度は低いが消費者の関心は高いトレンド、つまりカテゴリーを定義したり、破壊したりする可能性のあるアンメットニーズ(まだ満たされていない顧客の潜在的な要求)を最初に発見したとしましょう。
ソーシャルリスニングのインサイトが提供するストーリーに確信をもつことで、施策の方向転換することができます。
Popeyes社はまさにそれを実現しました。
Popeyes社は当初、今年の夏にチキンサンドを発売するためにテレビ広告を多用する予定でしたが、X(旧Twitter)で「チキンサンド戦争」が勃発するとPopeyesはテレビCMを見送りました。
その結果、商品の販売は2週間後には販売を中止し、在庫を補充しなければならないほど商品が注目されました。
なぜこんなことになったのでしょうか?
競合他社であるChik-fil-A社が、自分たちの立場を危うくするような発言をしたことに対して、エッジの効いた対応をしたことが話題になりました。
このツイートは323,400以上の「いいね!」と86,000以上の「リツイート」を集めました。このトーンは、ポパイズの南部のルーツを全面的に反映したもので、ブランドを人間味あふれるものにしてくれました。
このツイートは33億回もフォローされ、ポパイズ・チキン・サンドウィッチは話題性のある新商品から、オンラインと現実世界の現象へと変化しました。
バーガーキングとポパイズのグローバルCMOであるフェルナンド・マチャドは「ポパイズがチキンサンドを復活させようと準備したとき、テレビCMは選択肢に入っていなかった」と言います。
通常は、テレビやデジタルを駆使して発売に力を入れるのですが、テレビ広告なしで最も成功した製品の発売となりました。
彼は「チキンサンドは、当社では珍しいアプローチで、今後の他の製品の発売にも役立つでしょう」と述べています。
これこそがセンチメント分析の力であり、愛を見つけ、その10倍の愛を得ることができるのです。
これらの事例は、ソーシャルアナリティクスの活用方法を理解することで違いが生まれることを証明するために挙げることができる具体的なケースです。ROIは明らかです。
進行中に監査を見直す
長期的には、ソーシャルメディアの監査が再び重要になります。
四半期、半年、1年と長期にわたってキャンペーンを見ていく中で、結果だけでなくアプローチのパターンも探していきます。
・それぞれのキャンペーンは、前のキャンペーンよりも優れていましたか?
・あるいは、時間の経過とともに結果が上下していませんか?
・毎回ソーシャルデータに基づいて調整しましたか?それともキャンペーンを放置してしまいましたか?
また、何が結果に影響を与えたのかにも注目してください。
・コンテンツの内容は適切でしたか?
・オーディエンスは誰なのか、明確ですか?
・正しいチャンネルで彼らにリーチしようとしていますか?
これらの質問への答えがわからない場合は、ソーシャルリスニングツールをテストする時です。センチメント分析と組み合わせることで、ソーシャルリスニングツールはあなたが知るべきことを明らかにします。
忘れてはならないのは、状況はいつでも変化する可能性があるということです。だからこそリアルタイム分析が重要なのです。
ソーシャルメディアの監査をおこなうと、昨年のホリデープロモーションではX(旧Twitter)が最適なチャンネルだったことがわかります。
しかし、この学校帰りのシーズンにはInstagramでより多くの交流が見られたとしましょう。これは、オーディエンスが移動したということであり、状況を変える必要があります。
そこで、ソーシャルリスニングを継続しておこない、オーディエンスが誰であるか、そして何を求めているかを把握します。コンテンツをInstagramなど分析の結果最適と判断したチャンネルで提供し、結果をリアルタイムで把握して必要に応じて調整します。
来年の今頃には、ソーシャルリスニングとソーシャルサクセスの直接的な関係であるソーシャルオーディットが改善されていることでしょう。
広義のROIを見る
もちろん、ソーシャルリスニングツールを上層部に売り込むには、ソーシャルでの成功だけでは不十分です。
だからこそ、Popeyes、UMG Nashville、Hotwireのような結果が重要なのです。ソーシャルアナリティクスが有効であることを我々が説明する必要はありません。彼らや同様の成功を収めている他の多くのブランドから説明を受けてください。
「マーケティングが重要でない」というわけではありませんが、利益やマーケティング以外の他の側面との明確な相関関係を示すことができれば、経営陣や他のステークホルダーの心をつかむことができるでしょう。
ここでは、やはりリアルタイム性が重要です。
ビジネスのパターンやトレンドを見極めるために長期的な視点で振り返ることが重要ですが、データアナリストではない人にとっても、今起きていることのスナップショットを視覚的に共有できることは素晴らしいツールです。
ソーシャルリスニングツールには、統合機能が備わっていることが望まれます。
消費者の声の全体像を把握するには、すべてのデータを一箇所に集め、例えばソーシャルデータと販売データの関係を明確にすることが必要です。
ソーシャルアナリティクスが役に立たないビジネス分野はありません。
あなたの努力が意図的なものであり、将来の意思決定を促進するためにベンチマークを使用する限り、ROIは決して問題にはなりません。
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