
購買行動とは、消費者が商品やサービスを購入するまでにたどる一連の行動や心理的変化を指します。
この記事では、購買行動の基本的な意味や「消費者行動」との違い、そして購買行動モデルの種類や役割について詳しく解説します。
購買行動モデルを理解することで、顧客の意思決定プロセスを把握し、効果的なマーケティング施策や販売促進戦略の立案が可能になるでしょう。
時代や技術の変化に対応した販売戦略を構築するための基礎知識として、ぜひ参考にしてください。

具体的には、商品やサービスの認知から情報収集、比較検討、最終的な購入決定、そして購入後の評価までを含みます。
この行動には、店舗での来店やネットショッピングといった物理的な動きだけでなく、「この商品は自分に合うだろうか」と考える心理的変化も含まれます。
購買行動を理解することは、消費者のニーズを的確に捉え、最適なタイミングや方法でアプローチするために欠かせません。
デジタル化やSNSの普及によって購買行動は多様化しており、その変化を把握することが、現代のマーケティングや販売戦略の成功につながります。
購買行動は実際の購入に関わる行動や意思決定プロセスに焦点を当てますが、消費者行動はその前段階や購入後の行動、さらには思想・価値観、文化、社会情勢といった外的要因まで含まれます。
学術的には両者を明確に区別することが多いですが、実務の現場では購買行動の範囲が拡大し、ほぼ同義で使われることもあります。
用語を正しく理解することで、より適切なマーケティング戦略や顧客分析が可能になるでしょう。
購買行動を「認知→関心→比較→購入→共有・再購買」といったプロセスに分類し、それぞれの段階でどのような心理が働き、何が意思決定に影響するかを可視化します。
代表的なモデルには、AIDMA(認知→関心→欲求→記憶→行動)やAISAS(認知→関心→検索→行動→共有)などがあります。
こうしたモデルを理解することで、各段階に応じたマーケティング施策や販促戦略を設計しやすくなります。
BtoCだけでなく、BtoBにおいても購買行動モデルは営業や顧客育成に役立つでしょう。
第一に、消費者心理や行動の流れを深く理解できるため、適切なタイミングや手法でアプローチが可能です。
第二に、購買プロセスの各段階で発生する課題を特定し、改善策を講じることが可能になります。
第三に、SNSやデジタル広告の普及によって変化する購買行動にも対応でき、時代や技術の進化に合わせた施策を打ち出せます。
旧来のモデルだけに依存せず、新しい購買行動パターンも取り入れることで、より実践的で成果につながる戦略を立案できるのです。
当時の購買行動モデルは、広告から消費者への受動的な情報伝達を前提に構築されていました。
代表的なモデルとして、AIDA、AIDMA、AIDCASがあり、それぞれが購買プロセスを段階的に整理し、広告戦略の基礎を築いてきました。
ここでは概要を押さえ、次項で各モデルを詳しく解説します。
AIDAは以下の4つの段階から成り立ちます。
このモデルは、テレビCM、新聞広告、店頭POPなどのマスメディア施策で特に重視され、広告主はAttentionからDesireまでを強く刺激する表現に力を注ぎました。
後に登場する多くのモデルは、AIDAを土台として発展しています。
構成は以下の通りです。
Memoryが追加されたことで、広告や情報が消費者の記憶に残る重要性が強調されました。
当時のマスメディア広告では、CMソングや繰り返しの露出、印象的なキャッチコピーなどを用いて記憶定着を狙いました。
AIDMAは、消費者が即時購入しない場合でも、記憶に留まった情報が後の購買行動に結びつくことを前提にしています。
この発展は、AIDAから広告効果をより持続的にする方向へと進化させた点が特徴です。
構成は以下の通りです。
Convictionの追加により、購入前に「この商品で間違いない」と思わせる説得が重視されました。
また、Satisfactionを含めることで、購買後の満足や評価が次回の購買や口コミ、ブランドロイヤルティ形成に大きく影響する点が明確化されました。
AIDCASは、購入前後の一連の流れを包括的にカバーするモデルとして、顧客満足度向上やリピート戦略の基礎となっています。
この時代は、情報取得が双方向化し、消費者が主体的に情報を探し、比較し、発信するようになったことが特徴です。
デジタル広告やSNSマーケティングの発展に伴い、AISAS、DECAX、AISCEAS、ZMOTといったモデルが登場し、多様化する消費者行動を分析・活用する枠組みが整いました。
ここではその概要を紹介し、各モデルの詳細は次項で解説します。
構成は以下の5段階から成ります。
AIDMAが一方向的な広告伝達を前提としていたのに対し、AISASでは消費者が能動的に情報を取得し、その結果を広く共有する点が特徴です。
レビューサイトの閲覧やSNSでの口コミは、他の消費者の購買行動にも大きく影響します。
検索と共有が購買プロセスに組み込まれたことは、デジタル時代のマーケティング戦略に大きな変革をもたらしました。
構成は以下の5段階です。
DECAXは、単なる広告接触からではなく、生活者が自ら発見し、関係を築き、体験を共有する流れを重視します。
特にBtoBや高関与商材で効果的で、SNS・動画・ブログなどのコンテンツを通じた長期的な信頼関係構築が重要です。
構成は以下のようになります。
AISCEASは、特に高額商品や長期契約が伴う商材(不動産、保険、車など)で重要なモデルです。
情報過多の時代、消費者は購入前に複数の候補を比較し、慎重に検討する傾向が強まっています。
AISASからの発展点は、この比較・検討フェーズを明確に組み込み、意思決定までのプロセスをより現実的に反映していることです。
これは、消費者が店舗や販売ページに接触する前に、オンラインで情報を収集し、購入をほぼ決定している状態を指します。
例えば、スマートフォンで口コミやレビュー動画を見て「これを買おう」と決めてから店頭に行く行動が典型です。
従来のFMOT(First Moment Of Truth=店頭で初めて商品を見て判断する瞬間)に対し、ZMOTではオンライン上での事前情報収集が意思決定の中心となります。
スマートフォンやSNSの普及により、ZMOTの重要性は年々高まっており、企業はオンライン上の評判管理やコンテンツ提供を重視する必要があります。
この短い時間で消費者が判断するため、パッケージデザイン、価格表示、販促POP、商品の陳列位置などが非常に重要です。
スーパーマーケットやコンビニでは、陳列棚の高さや視認性の高いパッケージが売上を左右することもあります。
オンラインショップにおいても、商品画像のサムネイルや説明文がFMOTのデジタル版として機能し、第一印象で購入意思が決まることがあります。
FMOTは店頭マーケティングや小売戦略において極めて重要な要素です。
この段階では、商品やサービスの品質、使用感、カスタマーサポート、アフターサービスなどが顧客満足度を左右します。
高い満足度はリピート購入やブランドロイヤルティの向上に直結し、SNSや口コミサイトでの好意的な評価発信にもつながります。
FMOTが購入前の瞬間的判断であるのに対し、SMOTは購入後の体験を通じて形成される評価の瞬間であり、その印象は他の潜在顧客の購買行動にも波及するのが特徴です。
企業はこの段階での体験価値向上を重視することで、長期的な売上とブランド力を高められます。
この段階では、ブランドのストーリーや価値観への共感が大きな役割を果たします。
顧客がブランドを信頼し、繰り返し購入するだけでなく、SNSやコミュニティで積極的に発信・推奨するようになることで、自然な宣伝効果が生まれます。
イベントやキャンペーンなど、顧客参加型の取り組みもTMOTの促進に有効です。
FMOTやSMOTが個々の購入や使用体験に関する瞬間であるのに対し、TMOTは長期的なロイヤルカスタマーへの成長を意味し、ブランド価値の向上と安定した収益基盤の確立につながります。
消費者は他者の投稿や口コミを通じて購買意欲を高め、短期間で話題商品が完売することも珍しくありません。
この時代の代表的な購買行動モデルがVISASです。
構成は以下のようになっています。
このモデルでは、情報拡散から購入、再び共有するまでの循環が特徴です。
SNS時代特有の「共感による購買決定」や「短期間での爆発的売上」はVISASで説明できます。
ブランドは共感を生む投稿やインフルエンサー活用戦略を意図的に設計することで、この循環を強化できます。
構成は以下の通りです。
SIPSは、企業と顧客が双方向の関係を築くためのモデルとしても有効で、共感を起点としたコミュニケーション促進に適しています。
インフルエンサー施策や共感型コンテンツの活用と親和性が高く、ブランドロイヤルティやファン化のきっかけづくりにも役立ちます。
構成は以下のようになっています。
User Generated Contents(UGC):ユーザーがSNSに投稿したコンテンツを発見
特徴は、検索行動がSNS内とWeb全体の二段階に分かれている点です。
SNSでの発見から始まり、購入後も拡散して他の消費者に影響を与える循環構造が形成されます。
特に若年層を中心に、SNSと検索行動を行き来する購買プロセスを的確に捉えたモデルです。
構成は以下の通りです。
このモデルの最大の特徴は、購入前後を問わず「検索・共有・拡散」の行動が複数フェーズで繰り返される点です。
SNSや口コミサイトを活用しながら、体験や購入のたびに情報が発信・拡散され、他者の購買行動に影響を与える循環が生まれます。
ブランドはこのサイクルを意識したプロモーション戦略が求められます。
購買行動モデルを理解することで、消費者の意思決定プロセスを把握し、マーケティング施策の精度を高めることが可能になります。
中でも、時代や媒体の変化に応じたモデル活用は、顧客接点の最適化やブランド価値向上に直結します。
TDSE株式会社が提供するQuid Monitor(旧NetBase)は、SNSや口コミなどの消費者インサイトを可視化し、マーケティング戦略に生かせる分析プラットフォームです。
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この記事では、購買行動の基本的な意味や「消費者行動」との違い、そして購買行動モデルの種類や役割について詳しく解説します。
購買行動モデルを理解することで、顧客の意思決定プロセスを把握し、効果的なマーケティング施策や販売促進戦略の立案が可能になるでしょう。
時代や技術の変化に対応した販売戦略を構築するための基礎知識として、ぜひ参考にしてください。
目次

購買行動とは?
購買行動とは、消費者が商品やサービスを購入するまでに行う一連の行動や、意思決定の過程を指します。具体的には、商品やサービスの認知から情報収集、比較検討、最終的な購入決定、そして購入後の評価までを含みます。
この行動には、店舗での来店やネットショッピングといった物理的な動きだけでなく、「この商品は自分に合うだろうか」と考える心理的変化も含まれます。
購買行動を理解することは、消費者のニーズを的確に捉え、最適なタイミングや方法でアプローチするために欠かせません。
デジタル化やSNSの普及によって購買行動は多様化しており、その変化を把握することが、現代のマーケティングや販売戦略の成功につながります。
消費者行動との違いは?
消費者行動とは、購買行動を含むより広い概念で、商品やサービスの購入に至るまでの全ての行動や心理的背景を指します。購買行動は実際の購入に関わる行動や意思決定プロセスに焦点を当てますが、消費者行動はその前段階や購入後の行動、さらには思想・価値観、文化、社会情勢といった外的要因まで含まれます。
学術的には両者を明確に区別することが多いですが、実務の現場では購買行動の範囲が拡大し、ほぼ同義で使われることもあります。
用語を正しく理解することで、より適切なマーケティング戦略や顧客分析が可能になるでしょう。
購買行動モデルとは?
購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入する際の行動や心理の流れを段階的に整理したフレームワークです。購買行動を「認知→関心→比較→購入→共有・再購買」といったプロセスに分類し、それぞれの段階でどのような心理が働き、何が意思決定に影響するかを可視化します。
代表的なモデルには、AIDMA(認知→関心→欲求→記憶→行動)やAISAS(認知→関心→検索→行動→共有)などがあります。
こうしたモデルを理解することで、各段階に応じたマーケティング施策や販促戦略を設計しやすくなります。
BtoCだけでなく、BtoBにおいても購買行動モデルは営業や顧客育成に役立つでしょう。
購買行動モデルを押さえておく重要性とは?
購買行動モデルを理解することは、効果的なマーケティング戦略を構築するための重要な基盤となります。第一に、消費者心理や行動の流れを深く理解できるため、適切なタイミングや手法でアプローチが可能です。
第二に、購買プロセスの各段階で発生する課題を特定し、改善策を講じることが可能になります。
第三に、SNSやデジタル広告の普及によって変化する購買行動にも対応でき、時代や技術の進化に合わせた施策を打ち出せます。
旧来のモデルだけに依存せず、新しい購買行動パターンも取り入れることで、より実践的で成果につながる戦略を立案できるのです。
【購買行動モデルの種類】マスメディア時代
マスメディア時代とは、新聞・テレビ・ラジオ・雑誌といった媒体を通じた一方向的な情報提供が主流だった2000年代頃までの時期を指します。当時の購買行動モデルは、広告から消費者への受動的な情報伝達を前提に構築されていました。
代表的なモデルとして、AIDA、AIDMA、AIDCASがあり、それぞれが購買プロセスを段階的に整理し、広告戦略の基礎を築いてきました。
ここでは概要を押さえ、次項で各モデルを詳しく解説します。
AIDA(アイダ)
AIDAモデルは、最も古典的な購買行動モデルの一つで、広告や販売促進活動の基礎理論として広く知られています。AIDAは以下の4つの段階から成り立ちます。
- Attention(注意):消費者の目を引き、商品の存在を認知させる
- Interest(関心):興味を持たせ、より深く知りたい気持ちを促す
- Desire(欲求):商品を欲しいと思わせる感情を喚起する
- Action(行動):実際の購入や問い合わせへと導く
このモデルは、テレビCM、新聞広告、店頭POPなどのマスメディア施策で特に重視され、広告主はAttentionからDesireまでを強く刺激する表現に力を注ぎました。
後に登場する多くのモデルは、AIDAを土台として発展しています。
AIDMA(アイドマ)
AIDMAモデルは、AIDAモデルに「Memory(記憶)」を加えた5段階の購買行動モデルです。構成は以下の通りです。
- Attention(注意): 消費者の目を引き、商品の存在を認知させる
- Interest(関心): 興味を持たせ、より深く知りたい気持ちを促す
- Desire(欲求): 商品を欲しいと思わせる感情を喚起する
- Memory(記憶): 得た情報や印象を記憶に残し、後の購買に備える
- Action(行動): 実際に購入や問い合わせなどの行動を起こす
Memoryが追加されたことで、広告や情報が消費者の記憶に残る重要性が強調されました。
当時のマスメディア広告では、CMソングや繰り返しの露出、印象的なキャッチコピーなどを用いて記憶定着を狙いました。
AIDMAは、消費者が即時購入しない場合でも、記憶に留まった情報が後の購買行動に結びつくことを前提にしています。
この発展は、AIDAから広告効果をより持続的にする方向へと進化させた点が特徴です。
AIDCAS(アイドカス)
AIDCASモデルは、AIDMAに「Conviction(確信)」と「Satisfaction(満足)」を加えた6段階の購買行動モデルです。構成は以下の通りです。
- Attention(注意): 消費者の目を引き、商品の存在を認知させる
- Interest(関心): 興味を持たせ、より深く知りたい気持ちを促す
- Desire(欲求): 商品を欲しいと思わせる感情を喚起する
- Conviction(確信): 購入の正当性や必要性を確信させる
- Action(行動): 実際に購入や問い合わせなどの行動を起こす
- Satisfaction(満足): 購入後の評価や満足感を得る
Convictionの追加により、購入前に「この商品で間違いない」と思わせる説得が重視されました。
また、Satisfactionを含めることで、購買後の満足や評価が次回の購買や口コミ、ブランドロイヤルティ形成に大きく影響する点が明確化されました。
AIDCASは、購入前後の一連の流れを包括的にカバーするモデルとして、顧客満足度向上やリピート戦略の基礎となっています。
【購買行動モデルの種類】Web時代
Web時代とは、インターネット検索やSNS、ECサイト利用が一般化した2000年代以降の時期を指します。この時代は、情報取得が双方向化し、消費者が主体的に情報を探し、比較し、発信するようになったことが特徴です。
デジタル広告やSNSマーケティングの発展に伴い、AISAS、DECAX、AISCEAS、ZMOTといったモデルが登場し、多様化する消費者行動を分析・活用する枠組みが整いました。
ここではその概要を紹介し、各モデルの詳細は次項で解説します。
AISAS(アイサス)
AISASモデルは、2004年に電通が提唱したWeb時代を代表する購買行動モデルです。構成は以下の5段階から成ります。
- Attention(注意):商品やサービスの存在に気付く
- Interest(関心):興味を持ち、もっと知りたくなる
- Search(検索):インターネットやSNSで情報を調べる
- Action(行動):購入や問い合わせなどの具体的行動に移る
- Share(共有):SNSや口コミサイトで感想や評価を発信する
AIDMAが一方向的な広告伝達を前提としていたのに対し、AISASでは消費者が能動的に情報を取得し、その結果を広く共有する点が特徴です。
レビューサイトの閲覧やSNSでの口コミは、他の消費者の購買行動にも大きく影響します。
検索と共有が購買プロセスに組み込まれたことは、デジタル時代のマーケティング戦略に大きな変革をもたらしました。
DECAX(デキャックス)
DECAXモデルは、2015年に電通が提唱した、コンテンツマーケティングに特化した購買行動モデルです。構成は以下の5段階です。
- Discovery(発見):ブログやSNS、動画などを通じて商品を知る
- Engagement(関係構築):興味を深め、ブランドとのつながりを強化する
- Check(確認):評判やレビューを調べ、信頼性を確認する
- Action(行動):購入や契約を行う
- eXperience(体験・共有):利用体験を発信し、他者に影響を与える
DECAXは、単なる広告接触からではなく、生活者が自ら発見し、関係を築き、体験を共有する流れを重視します。
特にBtoBや高関与商材で効果的で、SNS・動画・ブログなどのコンテンツを通じた長期的な信頼関係構築が重要です。
AISCEAS(アイシーズ)
AISCEASモデルは、AISASに「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」を加えた7段階のモデルです。構成は以下のようになります。
- Attention(注意): 商品やサービスの存在に気付く
- Interest(関心): 興味を持ち、もっと知りたいと思う
- Search(検索): インターネットやSNSで情報を調べる
- Comparison(比較): 類似商品・サービスを比較する
- Examination(検討): 条件や価格、サービス内容を詳細に吟味する
- Action(行動): 実際に購入や契約などの行動を起こす
- Share(共有): 購入後の感想や評価をSNSや口コミで共有する
AISCEASは、特に高額商品や長期契約が伴う商材(不動産、保険、車など)で重要なモデルです。
情報過多の時代、消費者は購入前に複数の候補を比較し、慎重に検討する傾向が強まっています。
AISASからの発展点は、この比較・検討フェーズを明確に組み込み、意思決定までのプロセスをより現実的に反映していることです。
ZMOT(ズィーモット)
ZMOT(Zero Moment Of Truth)は、2011年にGoogleが提唱した概念で、「ゼロの真実の瞬間」と訳されます。これは、消費者が店舗や販売ページに接触する前に、オンラインで情報を収集し、購入をほぼ決定している状態を指します。
例えば、スマートフォンで口コミやレビュー動画を見て「これを買おう」と決めてから店頭に行く行動が典型です。
従来のFMOT(First Moment Of Truth=店頭で初めて商品を見て判断する瞬間)に対し、ZMOTではオンライン上での事前情報収集が意思決定の中心となります。
スマートフォンやSNSの普及により、ZMOTの重要性は年々高まっており、企業はオンライン上の評判管理やコンテンツ提供を重視する必要があります。
FMOT(エフモット)
FMOT(First Moment Of Truth)は、顧客が店頭やオンラインショップで商品に初めて接触し、わずか3〜7秒程度で購入する商品を決定する瞬間を指します。この短い時間で消費者が判断するため、パッケージデザイン、価格表示、販促POP、商品の陳列位置などが非常に重要です。
スーパーマーケットやコンビニでは、陳列棚の高さや視認性の高いパッケージが売上を左右することもあります。
オンラインショップにおいても、商品画像のサムネイルや説明文がFMOTのデジタル版として機能し、第一印象で購入意思が決まることがあります。
FMOTは店頭マーケティングや小売戦略において極めて重要な要素です。
SMOT(エスモット)
SMOT(Second Moment Of Truth)は、消費者が商品を購入後に実際に使用し、「また買いたい」「人に勧めたい」と思う瞬間のことです。この段階では、商品やサービスの品質、使用感、カスタマーサポート、アフターサービスなどが顧客満足度を左右します。
高い満足度はリピート購入やブランドロイヤルティの向上に直結し、SNSや口コミサイトでの好意的な評価発信にもつながります。
FMOTが購入前の瞬間的判断であるのに対し、SMOTは購入後の体験を通じて形成される評価の瞬間であり、その印象は他の潜在顧客の購買行動にも波及するのが特徴です。
企業はこの段階での体験価値向上を重視することで、長期的な売上とブランド力を高められます。
TMOT(ティーモット)
TMOT(Third Moment Of Truth)は、消費者が商品やブランドに愛着を持ち、ファンとして長期的に支持するようになる瞬間のことです。この段階では、ブランドのストーリーや価値観への共感が大きな役割を果たします。
顧客がブランドを信頼し、繰り返し購入するだけでなく、SNSやコミュニティで積極的に発信・推奨するようになることで、自然な宣伝効果が生まれます。
イベントやキャンペーンなど、顧客参加型の取り組みもTMOTの促進に有効です。
FMOTやSMOTが個々の購入や使用体験に関する瞬間であるのに対し、TMOTは長期的なロイヤルカスタマーへの成長を意味し、ブランド価値の向上と安定した収益基盤の確立につながります。
【購買行動モデルの種類】SNS時代
SNS時代は、InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどを通じて情報が瞬時に拡散・共有される時代を指します。消費者は他者の投稿や口コミを通じて購買意欲を高め、短期間で話題商品が完売することも珍しくありません。
この時代の代表的な購買行動モデルがVISASです。
VISAS(ヴィサス)
VISASモデルは、SNS上の情報発信を起点とする購買行動を5段階で整理したフレームワークです。構成は以下のようになっています。
- Viral(拡散):SNSで情報が急速に広がる
- Influence(影響):インフルエンサーや友人の投稿が購買意欲を刺激する
- Sympathy(共感):投稿内容やブランドメッセージに共感する
- Action(行動):実際に購入や予約を行う
- Share(共有):購入後に自らもSNSで発信し、再び拡散につなげる
このモデルでは、情報拡散から購入、再び共有するまでの循環が特徴です。
SNS時代特有の「共感による購買決定」や「短期間での爆発的売上」はVISASで説明できます。
ブランドは共感を生む投稿やインフルエンサー活用戦略を意図的に設計することで、この循環を強化できます。
SIPS(シップス)
SIPSモデルは、SNS時代における購買行動を「必ずしも購入に限定しない」という特徴を持つ4段階で表したモデルです。構成は以下の通りです。
- Sympathize(共感):SNS上の投稿や情報に共感する
- Identify(確認):その情報の信憑性や発信者を確認する
- Participate(参加):イベントやキャンペーン、アンケート回答、SNSでのコメントなど購買以外の方法で関与する
- Share & Spread(共有・拡散):参加や体験をSNSで発信し広める
SIPSは、企業と顧客が双方向の関係を築くためのモデルとしても有効で、共感を起点としたコミュニケーション促進に適しています。
インフルエンサー施策や共感型コンテンツの活用と親和性が高く、ブランドロイヤルティやファン化のきっかけづくりにも役立ちます。
ULSSAS(ウルサス)
ULSSASモデルは、2019年にホットリンクが提唱した、SNS起点の購買行動を6段階で整理した循環型モデルです。構成は以下のようになっています。
User Generated Contents(UGC):ユーザーがSNSに投稿したコンテンツを発見
- Like(いいね):好意的な反応を示す
- Search1(SNS検索):SNS内で関連情報を探す
- Search2(一般検索):Googleなどで詳細情報を調べる
- Action(行動):購入や利用など具体的行動を取る
- Spread(拡散):自らもSNSで発信する
特徴は、検索行動がSNS内とWeb全体の二段階に分かれている点です。
SNSでの発見から始まり、購入後も拡散して他の消費者に影響を与える循環構造が形成されます。
特に若年層を中心に、SNSと検索行動を行き来する購買プロセスを的確に捉えたモデルです。
RsEsPs(レップス)
RsEsPsモデルは、2019年に日本プロモーショナル・マーケティング協会が提唱した、現代の複雑な購買行動を6段階で整理したモデルを指します。構成は以下の通りです。
- Recognition(認知): 商品やブランドの存在を知る
- Search・Spread・Share(検索・拡散・共有): SNSや口コミで情報を探し、広め、共有する
- Experience(体験): イベントや試供品などを通じて直接体験する
- Search・Spread・Share(検索・拡散・共有): 体験後に再度情報を検索・拡散・共有する
- Purchase(購入): 実際に商品やサービスを購入する
- Search・Spread・Share(検索・拡散・共有): 購入後も感想や評価を検索・拡散・共有する
このモデルの最大の特徴は、購入前後を問わず「検索・共有・拡散」の行動が複数フェーズで繰り返される点です。
SNSや口コミサイトを活用しながら、体験や購入のたびに情報が発信・拡散され、他者の購買行動に影響を与える循環が生まれます。
ブランドはこのサイクルを意識したプロモーション戦略が求められます。
まとめ
本記事では、マスメディア時代からWeb時代、SNS時代に至るまでの多様な購買行動モデルを紹介し、それぞれの構成要素や特徴を解説しました。購買行動モデルを理解することで、消費者の意思決定プロセスを把握し、マーケティング施策の精度を高めることが可能になります。
中でも、時代や媒体の変化に応じたモデル活用は、顧客接点の最適化やブランド価値向上に直結します。
TDSE株式会社が提供するQuid Monitor(旧NetBase)は、SNSや口コミなどの消費者インサイトを可視化し、マーケティング戦略に生かせる分析プラットフォームです。
ブランド評価の把握から競合比較まで幅広く対応でき、実務での活用価値が高いツールとなっています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
Quid Monitor(旧NetBase)の詳細・資料ダウンロードはこちら
